Thyra
服薬中程度のエビデンス

チラーヂンで便秘になる?レボチロキシン服用中にまず確認すること

レボチロキシン(チラーヂンS)は、便秘の原因として知られている薬ではありません。公式の添付文書に便秘の記載はなく、この薬で胃腸の調子が乱れるときは、たいてい用量が多すぎて、腸の動きが遅くなるのではなく速くなる方向に働いています。レボチロキシンを飲んでいて便秘があるなら、もっと役に立つ問いは「ほかに何が起きているか」です。用量がまだ足りないのか、サプリメントやほかの薬なのか、それとも日々の習慣なのか。

レボチロキシンで便秘になりますか?

認められた副作用としては、なりません。米国FDAのシンスロイドの処方情報は、レボチロキシンの副作用は「主に治療上の過量投与による甲状腺機能亢進症の症状」だとしています [C1]。記載されている消化器系の影響は、下痢、嘔吐、腹部のけいれん痛、肝機能検査値の変化で、便秘はリストにありません [C1]。

これは生理学的にも筋が通っています。甲状腺ホルモンは腸の動きを速めます。甲状腺の働きが活発すぎる人は腸の通過が速く下痢になりやすく、働きが低下している人は便秘になりやすい傾向があります [C2]。レボチロキシンは甲状腺が作れていないホルモンを補う薬なので、適量なら腸の動きを正常に近づけ、多すぎれば便がゆるく回数が多くなる方向に押しやります。

ですから、レボチロキシン服用中に便秘に気づいたら、原因を探る価値のある手がかりです。多くの場合、その答えは錠剤そのもの以外にあります。どの症状が薬によるもので、どれが用量によるものかを広く知りたい方は、レボチロキシンの副作用:本物と思い込みの見分け方をご覧ください。

そもそも甲状腺機能低下症で便秘になるのはなぜですか?

甲状腺ホルモンは消化管の筋肉の細胞に直接働きかけます。ホルモンが少ないと、便を押し進める筋肉の波(蠕動)が弱く遅くなり、便秘は甲状腺機能低下症で最もよく見られる消化器症状のひとつです [C2]。米国国立糖尿病・消化器・腎臓病研究所(NIDDK)も、便秘の原因となりうるホルモンの病気として甲状腺機能低下症を挙げています [C8]。

幸い、この腸の動きの低下はホルモン補充に反応します。1984年の小規模な研究では、甲状腺機能低下症の患者に甲状腺ホルモンを補充すると、腸の通過時間が有意に短くなりました [C3]。診断前から便秘があったなら、用量が適切に調整されるにつれて少しずつよくなると考えるのは妥当です。この側面については甲状腺機能低下症と便秘のガイドで詳しく扱っています。

用量がまだ足りないのでは?

まず確認すべきはこれです。便秘が診断前から始まっていて改善していない、あるいはしばらく調子がよかったあとに戻ってきた場合、吸収されている量が十分でない可能性があります。添付文書には、一見十分な用量なのに甲状腺機能低下症のサインが続く場合、吸収不良、飲み忘れ、薬の相互作用、またはそれらの組み合わせが考えられると書かれています [C1]。

その答えを出すのがTSHの血液検査です。成人の場合、添付文書は用量変更のたびに6〜8週後、用量が安定したら6〜12か月ごと、症状が変わったらそれより早くTSHを確認するよう勧めています [C1]。レボチロキシンが十分な効果を発揮するまで4〜6週間かかることがあるため、飲み始めや用量変更の直後の数週間の便秘は、単に効果がまだ追いついていないだけかもしれません [C1]。

自分の判断で用量を変えないでください。症状を医師に伝え、TSHの確認時期かどうかを尋ね、調整は検査結果にもとづいて決めてもらいましょう。

レボチロキシン服用中に便秘を起こすサプリメントや薬は?

よく使われる製品のなかには、腸の動きを遅くすると同時に、レボチロキシンの吸収量を減らすものがいくつかあります。その結果、サプリメントが直接便秘を起こし、さらにわずかな補充不足も招くという悪循環が生まれることがあります。

  • 鉄。 NIDDKは便秘を悪化させうる製品として鉄のサプリメントを挙げています [C8]。鉄はレボチロキシンとも結合します。安定した用量を飲んでいた14人を対象にした1992年の研究では、硫酸鉄300 mgをレボチロキシンと一緒に12週間飲むと、平均TSHが1.6から5.4 mU/Lに上がり、14人中9人で甲状腺機能低下症の症状が増えました [C5]。
  • カルシウム。 カルシウムを含む制酸薬は、NIDDKの便秘を起こしうる製品のリストに入っています [C8]。炭酸カルシウムやクエン酸カルシウムは、レボチロキシンの吸収を下げることが示された製品でもあります [C4]。
  • ほかの薬。 NIDDKはさらに、オピオイド(医療用麻薬)の痛み止め、抗コリン薬や鎮痙薬、抗けいれん薬、カルシウム拮抗薬、利尿薬、パーキンソン病の薬、一部の抗うつ薬を挙げています [C8]。

添付文書は、レボチロキシンを炭酸カルシウムや硫酸鉄など結合しやすい製品から少なくとも4時間あけて飲むよう勧めています [C1]。1日のなかへの組み込み方はカルシウム・鉄とレボチロキシンのガイドで紹介しています。

レボチロキシン服用中の便秘で考えられる原因

次の受診までに、この表で候補を絞り込んでみてください。

考えられる原因手がかり確認すること・尋ねること
用量がまだ足りない便秘に加えて疲れ、寒がりなど甲状腺機能低下症の症状がある。診断以来よくなっていないTSHの確認時期かどうか尋ねる(用量変更のたびに6〜8週後)[C1]
鉄のサプリメント鉄を始めた、または増やした。便が黒い、胃の不調レボチロキシンから少なくとも4時間あける飲み方と、自分に合う別の形があるかを尋ねる [C1][C5][C8]
カルシウムのサプリメントや制酸薬毎日のカルシウム、カルシウム入りマルチビタミン、制酸薬をよく使う錠剤との間隔と、その量が必要かどうかを尋ねる [C1][C4][C8]
食物繊維サプリメントのタイミング錠剤を飲む時間の近くでサイリウム、ふすま、食物繊維パウダーを始めた。または飲む時間が日によってばらばら毎日同じタイミングにそろえ、次のTSH検査の前に医師に伝える [C6][C7]
ほかの薬新しいオピオイドの痛み止め、抗コリン薬、抗うつ薬、血圧やけいれんの薬飲んでいる薬に便秘を起こすものがないか薬剤師に尋ねる [C8]
食事、水分、活動量果物、野菜、全粒穀物が少ない。水分が少ない。座っている時間が長い十分な水分とともに、1日22〜34 gの食物繊維を目標に少しずつ増やす [C8][C9]
ブランドや剤形の変更薬局で別の錠剤に切り替わったあとに症状が始まった切り替え後にTSHを確認すべきか尋ねる [C1][C4]
甲状腺とは関係ない原因過敏性腸症候群(IBS)、セリアック病、妊娠、旅行、骨盤底の問題、または警告サイン(下記参照)とくに危険なサインに当てはまる場合は医師の診察を受ける [C8]

食物繊維は便秘に役立つけれど、レボチロキシンに影響する?

食物繊維は便秘対策で最も役に立つ手段のひとつです。NIDDKは、成人は年齢と性別に応じて1日22〜34 gの食物繊維を目標にし、少しずつ増やし、働きを助けるために十分な水分をとるよう勧めています [C9]。

問題は、食物繊維がレボチロキシンの邪魔をすることがある点です。添付文書には、食物繊維がレボチロキシンと結合して吸収を下げる可能性があると書かれています [C1]。1996年の報告では、異常に多い用量を必要としていた人が食物繊維サプリメントをやめると、TSHが下がるか、必要なレボチロキシンの量が減りました。また実験室の検査では、小麦ふすまがレボチロキシンと結合しました [C6]。ところが、8人のボランティアを対象にした1998年の研究では、サイリウムやポリカルボフィルカルシウムをレボチロキシンと同時に飲んでも、吸収の低下は検出されませんでした [C7]。2017年のレビューは、食物繊維の影響はまだ十分に解明されていないと結論づけています [C4]。

実践的な答えは「一貫性」です。用量はあなたの生活に合わせて決まっているので、食物繊維の量が急に変わったり、食物繊維サプリメントを毎日違う時間に飲んだりすると、吸収される量が変わることがあります。多くの人は食物繊維サプリメントを錠剤の数時間後に飲んでいます(食物繊維サプリメントとレボチロキシンのガイドでは4時間あけています)。食物繊維の摂取量を大きく変えたら医師に伝え、次のTSH検査で考慮してもらいましょう。

ブランドや剤形の変更で便秘になることはありますか?

直接便秘を起こす可能性は低いでしょう。添付文書には添加物へのまれな反応の記載がありますが、挙げられている消化器症状は腹痛、吐き気、嘔吐、下痢で、便秘ではありません [C1]。また、レボチロキシンそのものへの過敏症は知られていないとも書かれています [C1]。

ただし、切り替えが間接的に影響することはあります。レボチロキシンは治療域の狭い薬なので、吸収量のわずかな違いが臨床的に意味をもつことがあります [C4]。薬局で製品が変わったあとに便秘やほかの甲状腺機能低下症の症状が始まったなら、TSHを確認すべきか尋ねるのは妥当です。切り替えが問題になる場面はジェネリックと先発品のレボチロキシンの記事で説明しています。

医師に相談すべきとき

セルフケアで便秘がよくならない場合や、大腸がん・直腸がんの家族歴がある場合は医師の診察を受けてください [C8]。NIDDKは、便秘に次のどれかが伴う場合はすぐに受診するよう勧めています [C8]。

  • 肛門からの出血、または便に血が混じる
  • お腹の痛みが続く
  • おならが出ない
  • 嘔吐
  • 発熱
  • 腰の痛み
  • 意図しない体重減少

これらのサインは甲状腺ホルモンの値では説明できず、別に評価を受ける必要があります。

Thyraは、その相談のための材料をそろえるお手伝いができます。服薬タイミング機能はレボチロキシンに合わせてコーヒー、朝食、サプリメントの時間帯を組み立て、症状記録は7日以上記録するとパターンを探します。

よくある質問

レボチロキシンを飲み始めたころに便秘になることはありますか?

便秘はレボチロキシンの副作用として記載されていません [C1]。ただし最初の数週間は、薬がまだ十分な効果を発揮していないため(4〜6週間かかることがあります)、甲状腺機能低下症による便秘がまだ和らいでいないだけかもしれません [C1]。最初の経過観察のTSH検査のあとも続くようなら、医師に相談してください。

レボチロキシンが多すぎると、便秘と下痢のどちらになりますか?

レボチロキシンの過剰は、便秘ではなく下痢と関連しています。添付文書は過量投与の影響として下痢、嘔吐、腹部のけいれん痛を挙げており [C1]、甲状腺の働きが活発すぎると腸の通過が速くなります [C2]。

便秘があるのは、レボチロキシンの量が少なすぎるということですか?

その可能性はありますが、いつもそうとは限りません。便秘は甲状腺機能低下症のよくあるサインなので [C2]、用量不足をTSH検査で除外する価値はあります [C1]。鉄、カルシウム、ほかの薬、食物繊維不足、IBSは、TSHの値に関係なく便秘を起こしえます [C8]。

レボチロキシンと一緒に下剤や便をやわらかくする薬を使えますか?

どの製品が合うか、どのタイミングで飲むかを薬剤師に尋ねてください。カルシウムを含む制酸薬のように、消化器症状をやわらげたり起こしたりする製品のなかには、レボチロキシンの吸収を下げ、錠剤と間隔をあける必要があるものもあります [C1][C4]。

サイリウムはレボチロキシンと一緒に飲んでも大丈夫ですか?

サイリウムは便秘によく使われています。食物繊維がレボチロキシンの吸収にどの程度影響するかは研究によって結果が分かれているので [C4][C6][C7]、いちばん安全な習慣は、毎日同じ時間に、錠剤から数時間あけて飲み、始めるときに医師に伝えることです。

まとめ

レボチロキシンは便秘の原因として認められておらず、用量が多すぎる場合はむしろ下痢に傾きます。服用中に便秘があるなら、TSHの確認時期かどうかを医師に尋ね、鉄、カルシウム、ほかの薬を薬剤師と見直し、錠剤とのタイミングを一定にしながら食物繊維と水分を少しずつ増やしましょう。便に血が混じる、原因不明の体重減少があるといった危険なサインがあれば、すぐに医療機関を受診してください。

関連記事

Thyraでさらに読む

食事・習慣・記録の理解を助けるための教育リソースです。医学的アドバイスや治療の推奨ではありません。

出典

  1. A
  2. A
  3. B
  4. A
  5. B
  6. B
  7. B
  8. A
  9. A